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フィリピン SMR導入へ米国が資金支援
1. 書誌情報
2. 要旨
米国通商開発庁(USTDA)がフィリピンの電力会社 MGEN 社に 280 万ドルを供与し、フィリピン初の SMR 導入フィージビリティ・スタディを支援。同時期にフィリピンエネルギー省(DOE)は原子力許認可のフローチャートを整備し、2032 年までに 120 万 kW の原子力発電所運転開始を目標とする国家計画が具体化している。
3. 背景
- フィリピンは電力需要の増大・エネルギー安全保障の観点から脱炭素電源の確保が急務
- 1986 年に完成しながら一度も運転しなかったバターン原子力発電所(PWR, 62 万 kW)の経緯もあり、長年原子力利用を見送ってきた
- 2023 年以降、マルコス政権が原子力回帰を明確化し、SMR を有力な選択肢として検討
- 米国は「原子力輸出」を外交・産業政策の柱に位置づけており、USTDA 資金提供は米比の原子力協力の一環
4. 主な内容
- USTDA の資金提供(2026年2月16日発表):280 万ドルを MGEN 社(マニラ電力の発電子会社)に供与。米国製 SMR の評価と導入ロードマップ策定に充当
- フィージビリティ・スタディの内容:立地選定・送電網接続・許認可手続き・資金調達スキームを包括的に整理。年内開始予定
- 許認可フローチャートの策定(2026年2月24日):フィリピン DOE が原子力発電所の建設・運転許認可を体系化。制度整備が進む
- 国家原子力導入計画:2032年に 120 万 kW → 2035年に 240 万 kW → 2050年に 480 万 kW と段階的に拡大
5. 今後の展開
- フィージビリティ・スタディの結果(2026年内)が SMR 機種選定・立地決定の重要な判断材料となる
- 米国製 SMR(NuScale、GE-Hitachi の BWRX-300、X-energy 等が候補)の比較評価が行われる見通し
- 許認可制度の整備が進めば、2030 年代前半の建設着工に向けた具体的なスケジュールが示される可能性
- 東南アジア各国(ベトナム・インドネシア・タイ等)も原子力導入を検討しており、フィリピンの動向が地域のリファレンスとなりうる
6. コメント
7. 関連キーワード
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BWR エンジニアの視点からは、米国製 SMR の有力候補として BWRX-300(GE-Hitachi)が注目される。 BWRX-300 は BWR/6 および ESBWR の設計を基にした第四世代 SMR で、自然循環冷却・受動安全系を特徴とする。 フィリピンの島嶼国としての送電網制約を考えると、大型炉より SMR の分散配置は理にかなっている。
隣国ベトナムがロシア(ロスアトム)と VVER 建設の政府間協定を結んだ(2026年3月)のと対照的に、 フィリピンは米国製 SMR を選択肢の中心に据えており、地政学的な軸の違いが鮮明になっている。 USTDA の資金提供はフィージビリティ段階であり、機種・メーカー確定はまだ先だが、 米国が早期から関与することで西側技術の採用へ誘導する狙いが見える。
許認可フローチャートの整備は実務的に重要な一歩。フィリピンは独立した原子力規制機関(PNRI)を持つが、 SMR 特有の審査項目(受動安全系の実証、モジュール工場製作の品質保証等)については今後の規制整備が課題となる。