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【第59回原産年次大会】原子力産業が直面する人材の課題と展望
書誌情報
要旨
第59回原産年次大会セッション1において、世界的な原子力回帰の加速に伴う人材確保・育成の課題が各国パネリストにより議論された。フランスでは年間1万人増員が必要とされ、米国では大量退職による技能空白が懸念される。日本では建設経験の喪失による技術継承機会の減少が固有課題として指摘された。議論は「人材」と「サプライチェーン」の不可分な関係に収斂し、長期的ロードマップの重要性が強調された。
背景
世界的な原子力人材問題の背景
- 2010年代の原子力停滞期(シェールガス安値・福島事故後の反原発機運)に採用が激減
- 停滞期に入職した世代が少なく、ベテラン(1970〜80年代の建設ラッシュ世代)の退職が本格化
- 2023年以降の原子力回帰宣言(COP28など)により新規建設・延長運転が急増し、需要が急増
- 需要急増に対して人材育成には10〜15年の教育・経験蓄積が必要というタイムラグが問題
第59回原産年次大会のテーマ設定
- 2026年大会はOECD/NEAと初共催し、国際的な視点での課題共有を重視
- セッション1(人材・サプライチェーン)、セッション2(DX・AI)の2本立てで議論を深堀り
主な内容
各国・登壇者の主な発言
- モデレーター・小原徹教授:2011年震災以降の新規建設途絶により国内人材確保が困難化。「経験者の高齢化・退職により技術継承に懸念が生じている」と問題提起
- フランス原子力産業協会(オリヴィエ・バール氏):今後10年間で年平均約1万人の増員が必要。ただし政府の明確なロードマップにより応募者不足は生じていない
- 米国原子力エネルギー協会(エリン・ハルトマン氏):大量退職による技能継承の空白を懸念。「仕事が見えなければ人材は育たない」—長期的な建設・運転の見通しが採用・育成に不可欠と強調
- 三菱総合研究所(鈴木清照氏):日本では建設経験喪失に伴う技術継承機会の減少が課題。定量化の必要性を強調
- 三菱重工業(三牧英仁氏):採用拡大に取り組むが、高卒技能者(溶接・配管など)の確保が課題になると認識
議論の収斂点
- 人材不足とサプライチェーン空洞化は表裏一体の問題であり、分けて論じることはできない
- 「仕事がある」という見通し(長期ロードマップ)が人材確保の前提条件
- 各国の課題は共通するが、具体的な対応策は国内産業構造・教育制度に依存する
今後の展開
- JAIF・OECD/NEAによる国際人材戦略ガイドラインの策定が今後の焦点
- 日本では次世代革新炉・既設炉延長の両方を見据えた人材育成計画の策定が急務
- 高卒技能者(溶接・機械)の確保には、建設業・製造業全体との競合が激化する見通し
- 国際交流・研修(IAEA、INSO等)を活用したグローバルな人材ネットワーク構築が加速する可能性
関連キーワード
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三菱重工
建設経験
NEI
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