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滴状凝縮について

書誌情報

著者棚沢 一郎
所属東京大学生産技術研究所
掲載誌日本舶用機関学会誌(Journal of the M.E.S.J.)
巻号第13巻 第1号(昭和53年1月 / January 1978)
掲載ページpp. 27–34
受付昭和52年11月1日
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背景

蒸気を冷却すると液化(凝縮)が起こる。凝縮には均質凝縮(空間中での分子ゆらぎ起源)と不均質凝縮(核を起点とするもの)があり、工業的に重要な面積凝縮(固体壁面上への凝縮)は大きく次の2形態に分類される。

どちらが実現するかは固体壁面が凝縮液でぬれるかどうかに依存する。滴状凝縮の熱伝達率は膜状凝縮の数倍〜20倍以上に達することが知られているが、そのメカニズムや実用化には多くの未解決問題が残っていた。

目的

滴状凝縮に関する過去の研究を俯瞰し、(1)滴状凝縮のサイクルと各基本過程、(2)初期液滴発生のメカニズム論争、(3)熱伝達率の測定値と理論、(4)実用化に向けた課題と促進法について概説・解説すること。

手法・内容

1. 滴状凝縮のサイクル(4つの基本過程)

2. 初期液滴の発生:2つの学説

学説提唱者主張評価
薄膜分裂説 Jakob(1936)
Welch-Westwater(1963)
最初に薄膜が形成され、限界膜厚に達すると分裂して液滴になる 高速顕微鏡観察が支持したが、後に否定的証拠も登場
核生成説 Umur-Griffith(1965) 液滴と液滴の間に液膜は存在せず、発生はすべて核生成現象(小孔・溝などが発生点) 現在の主流説。ただし完全な実証はなく、筆者は両説の折衷も考慮

筆者(棚沢)は、完全に欠陥のない表面では核生成が起こり、実際の表面では合体・掃除後の微小欠陥上で液滴が再発生すると推測している。

3. 熱伝達率の測定

各種熱伝達過程の比較(表1より):

過程熱伝達率(kcal/m²h℃)条件
自然対流(空気)3常温、温度差10℃
自然対流(水)260〜300
核沸騰(水)約50,000大気圧
膜状凝縮(水)約20,000q=5×10⁵ kcal/m²h付近
滴状凝縮(水)約200,000q=5×10⁵ kcal/m²h付近

実験による滴状凝縮熱伝達率の測定範囲:1.5×10⁵〜2.5×10⁵ kcal/m²h deg(1気圧水蒸気、垂直平面)。ばらつきの主因は(1)蒸気流速、(2)凝縮面の大きさ、(3)促進剤の状態。

4. 離脱径と熱伝達率の関係

筆者ら(棚沢・落合ら)の実験で、熱伝達率は外力の種類によらず離脱径の約0.3乗に反比例することを実証。すなわち:

h ≈ 2.1×10⁴ × D−0.31 (kcal/m²h deg、Dはmm単位)

離脱径を小さくするには蒸気流速を上げることが最も有効であり、これにより熱伝達率増大と不凝縮気体の蓄積抑制の両方の効果がある。

結果・考察

滴状凝縮の実用化課題と促進法

促進法問題点
はっ水性物質の塗布 ステアリン酸、ベンジルメルカプタン、シリコーン油 液滴の落下で流失し、数百時間で効果消滅
蒸気中への促進剤添加 微量の有機物を蒸気に混入 凝縮水中に混入し再処理が必要、腐食の懸念
貴金属被膜 金めっき(最も効果的) 経済性の問題、金めっき自体の完全な撥水機構に疑問
高分子被膜 テフロン、パリレン(厚さ1μm) 熱伝導率が低いため数ミクロン以下の薄膜が必要、密着性・耐久性の課題
実用化の結論(1978年時点):十分耐久性のある滴状凝縮面はまだ実現していない。ただし材料開発のスピードを考えると、数倍の性能をもつ材料が近い将来登場すると期待される。

読んだコメント

未解決問題・今後の課題

研究課題メモ

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キーワード

滴状凝縮 膜状凝縮 核生成 薄膜分裂 熱伝達率 離脱径 促進剤(プロモータ) 不凝縮気体 表面張力 はっ水性 金めっき 高分子被膜 Nusselt Jakob Umur-Griffith