← 論文まとめ一覧

詳細解析手法の導入に向けた熱流動・核特性安全解析手法の整備(Phase-2)

著者・機関江口裕、上原宏明、酒井友宏、柴茂樹、藤田達也、岩橋大希、江畑茂男、笠原文雄、小西秀雄、藤岡一治、増原康博、山本徹
原子力規制庁 長官官房技術基盤グループ システム安全研究部門
発行年2019年3月(平成31年3月)
報告書番号RREP-2019-1002
種別安全研究成果報告(原子力規制庁)
実施期間平成25年度〜平成29年度(2013〜2017年度)
英文タイトルDevelopment of Analysis Tools for Thermal-Hydraulics and Neutronics Simulations (Phase-2)
PDFPDF を開く
分野タグ BWR ATWS BEPU 熱流動 核熱結合 LOCA 安全解析 TRACE/PARCS 炉心不安定性 FFRD

背景

目的

手法

① BEPU手法の実践(PWR 大破断LOCA)

② LOCA時FFRD現象評価(FRAPCON/FRAPTRAN + TRACE)

③ ATWS解析(炉心3次元核熱結合)

④ 高エネルギー配管破損時蒸気放出影響評価(GOTHIC)

⑤ 核特性安全解析手法の整備

主要結果

BEPU解析(PWR大破断LOCA)

FFRD現象評価

BWR ATWS解析(TRACE/PARCS)

PWR ATWS解析(TRACE/SKETCH)

核定数・核特性

コメント

BWRエンジニアの視点から:

本報告書の最大の価値は、BWR ATWS解析における3次元核熱結合解析(TRACE/PARCS)の妥当性確認フレームワークを示した点である。Ringhals-1安定性試験・Oskarshamn-2不安定性事象という「実機で不安定性が発生した実績のある事象」を用いたベンチマークは、炉心安定性解析コードの信頼性根拠として極めて重要な位置づけを持つ。

特にBWRエンジニアとして注目すべきは、ABWRのATWS解析結果における核熱水力不安定性の挙動である。主蒸気隔離弁閉止後の事象中期において給水温度低下→出力分布下方歪み→不安定性という連鎖が発現し、燃料表面での沸騰遷移とリウェットが繰り返される。この一連の過程を3次元核熱結合で精度よく評価するためには、圧力容器詳細分割と非均等チャンネルノード分割が不可欠であり、これは自分たちが解析モデルを構築する際の直接的な指針となる。

モデリング上の実践的知見として、軸方向非均等ノード分割(流速比例)、下部プレナム詳細分割、半陰解法の選択という3点は、今後自らTRACE/PARCSでBWR解析を行う場合の必須チェックリストとして活用できる。SETS法(多段階陰解法)は高速だが数値拡散が大きく安定性解析には不向きという注意点も重要な知見。

FFRD現象については、PCTへの影響が約60℃という定量値が得られたことは、高燃焼度化を進める実炉での燃料健全性評価において看過できない。ハルデン炉計画での実験データとの整合性確認が行われている点で信頼性は高い。今後の高燃焼度燃料導入プロジェクトでのLOCA評価において必ず参照すべき知見である。

規制側の独立審査能力という観点では、NRAがBWR炉心(3種)とPWR炉心(2種)にわたるATWS解析用PARCS核定数データを整備したことは、事業者申請への技術的反論能力を示す。核定数誤差1%以下という精度は、SIMULATE5との比較で確認されており実用上十分と言える。

未解決問題・今後の課題

英語要旨の全文翻訳

日本における商用原子力発電所に対する新たな規制要件では、単一故障を想定した運転時の異常な過渡変化(AOO)および設計基準事故(DBA)への対策だけでなく、多重故障を想定した重大事故(SA)への対策(SAの予防および影響緩和)も求められている。国内外の動向を踏まえると、AOO・DBAのコード解析については、複雑現象に対してより現実的な評価を可能にするため、Best Estimate Plus Uncertainty(BEPU)アプローチが用いられることが期待されている。SA対策の有効性評価については、事故時の原子力発電所における事象進展をより良く理解する観点から、規制ガイドが最良推定手法を標準として適用すべきとしている。日本の原子力規制委員会(NRA)は、適用される新しい安全評価手法の適用可能性を確認するだけでなく、安全余裕をより正確に把握するために安全評価手法を継続的に改善する必要がある。本プロジェクトでは、熱流動・核特性の安全評価手法の改善の一環として、主として顕著な燃料破損を伴わないSAの解析を通じて最良推定解析ツールが開発された。

AOO・DBAについては、BEPU解析の適用可能性を確認するため、大破断LOCAについてBEPU解析を実施した。ここでは統計解析に順序統計法(ノンパラメトリック手法)とパラメトリック手法の両方を適用した。また、LOCAにおける炉心冷却性に影響を及ぼす可能性のある燃料挙動(燃料ペレットの細片化を含む)の解析コードを整備し、商用原子力発電所において同燃料挙動が燃料被覆管最高温度に及ぼす影響を適切に評価できることを確認した。顕著な燃料破損を伴わないSAの解析については、3次元熱流動・核特性結合解析コードの計算速度向上と機能拡張を行った。さらに、高エネルギー配管の破断により放出される二相流が安全設備に及ぼす影響を評価するための新手法を開発し、温度検知センサの設置位置妥当性および緩和策の有効性を評価することを可能にした。

炉心核特性解析コードの整備として、BEPU解析に関連して核特性の不確かさを評価する機能をCASMO5/SIMULATE5コードシステムに付加するとともに、PARCSコードでATWS解析に必要な核定数を整備した。臨界安全解析コードの整備においては、重核種の上方散乱の厳密な取り扱いによるドップラー反応度への影響、MOX燃料のPuスポットの非均質効果等を評価し、技術的知見を拡充した。

関連論文

キーワード

ATWS BWR ABWR PWR BEPU TRACE PARCS SKETCH 核熱結合解析 炉心不安定性 大破断LOCA PCT FFRD 順序統計法 感度解析 CASMO5 SIMULATE5 MVP-2 ドップラー反応度 MOX燃料 Ringhals-1 Oskarshamn-2 GOTHIC 安全解析 NRA