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環境影響評価(EIA)
Environmental Impact Assessment。
大規模な開発事業を実施する前に、その事業が環境に与える影響を事前に調査・予測・評価し、公表するプロセス。
原子力施設の立地・建設においては許認可取得の重要な前提条件となる。
基本プロセス
① スコーピング
評価すべき環境項目・調査範囲・手法を事前に絞り込む。関係機関や住民の意見を踏まえて実施範囲を確定する。
② 現況調査(ベースライン調査)
事業実施前の環境基準値(大気・水質・生態系・放射線など)を測定し、評価の基準点とする。
③ 影響予測
事業実施後に生じる環境変化を定量的に予測する。原子力では温排水・放射線・電磁波などが主な対象。
④ 緩和策の検討
影響を低減・回避するための対策を立案する。代替案(別サイト・別工法)との比較も行う。
⑤ 公衆参加
地域住民・関係機関・NGOからの意見聴取。評価書の縦覧・説明会・パブリックコメントが含まれる。
⑥ 評価書作成・提出
規制当局に評価書を提出し、許認可審査の判断材料とする。
評価対象となる主な環境項目
| 分野 | 評価内容 |
| 水資源 | 冷却水取水・温排水による水温上昇・水生生態系への影響 |
| 大気 | 建設時の粉塵・通常運転時の微量放射性気体(Kr-85・H-3など) |
| 放射線 | 周辺住民への被ばく線量評価(通常運転・事故時) |
| 生態系 | 動植物・希少種・生息地への影響 |
| 土地利用 | 周辺地域の土地利用変化・景観 |
| 社会経済 | 雇用・人口・地域経済・交通への影響 |
米国の制度(NEPA)
- NEPA(国家環境政策法、1969年) に基づき、連邦政府関与事業すべてにEIAを義務化
- NRC(核規制委員会)は建設許可・運転許可の審査においてNEPAに基づく評価を実施
- 重大な影響が見込まれる場合は EIS(Environmental Impact Statement:環境影響評価書) を作成・公表
- ARDP Track 1炉(NatriumおよびXe-100)もサイト許認可の際にEISの提出が必要
- Xe-100の場合、Dow化学の産業サイトという非電力系立地でのEIA適用が新たなケースとなる
日本の制度
- 環境影響評価法(1997年制定、1999年施行) に基づく
- 原子力発電所は第一種事業として EIA が義務付けられている
- 電力会社が評価書を作成し、経済産業大臣・環境大臣への審査を経て地域住民への縦覧・意見聴取を実施
- 方法書 → 準備書 → 評価書 の段階的プロセスを経る
SMR・次世代炉とEIAの課題
SMRは出力・敷地規模が従来炉より小さく、工場・離島・産業サイトへの立地が想定される。
既存のEIA制度は大型軽水炉を前提に設計されているため、SMRへの適用方法(評価範囲・手続き簡略化の可否など)が各国で議論中。
特にモジュール型で複数基を段階的に追加導入する場合、累積的影響の評価方法が課題となっている。
- Xe-100の事例:Dow Chemical産業サイト(ワシントン州)という非電力系立地への適用は、SMR向けNEPA手続きの先行事例として注目されている
- NRCの対応:SMR・先進炉向けに許認可プロセスの効率化(Part 53)を検討中。EIAの段階的・反復的実施も議論されている
- 日本:環境影響評価法の対象は出力に応じて規定されており、小出力SMRへの適用範囲の整理が今後の課題
関連キーワード
NEPA(米国環境政策法)
EIS(環境影響評価書)
NRC
環境影響評価法(日本)
公衆参加
温排水
放射線影響
SMR立地
ARDP