Reactor Pressure Vessel。BWRの核心構造体であり、炉心・炉内機器・冷却水を一体的に収納する円筒形高圧容器。 設計圧力約8.62 MPa・設計温度約300 ℃の環境下で、炉心から発生した蒸気を直接タービンへ送るBWR固有の一次冷却材系統を構成する。 RPV内部には燃料集合体・炉心シュラウド・蒸気分離器・蒸気乾燥器など多数の炉内機器が配置される。
目次
| 項目 | BWR/5(代表値) | ABWR(代表値) |
|---|---|---|
| 電気出力 | 約 1,100 MW(e) | 約 1,350 MW(e) |
| 熱出力 | 約 3,300 MW(th) | 約 3,926 MW(th) |
| RPV内径 | 約 5,560 mm | 約 7,100 mm |
| RPV全高 | 約 21,900 mm | 約 21,000 mm |
| 胴板板厚 | 約 160 mm | 約 170 mm |
| 設計圧力 | 8.62 MPa(g) | 8.62 MPa(g) |
| 設計温度 | 302 ℃ | 302 ℃ |
| 運転圧力(ドーム部) | 約 7.17 MPa | 約 7.17 MPa |
| 運転温度(飽和) | 約 285 ℃ | 約 285 ℃ |
| 容器空重量 | 約 700 t | 約 900 t |
| 主要材料(胴板) | 低合金鋼 SA-533 Gr.B / SA-508 Cl.3 | 同左 |
| 内面クラッド | オーステナイト系SUS(約 4〜5 mm) | 同左 |
| 再循環方式 | 外部再循環ポンプ+ジェットポンプ | 内部ポンプ(RIP×10台) |
| 制御棒駆動方式 | 水圧駆動(CRD 下部) | 水圧駆動(CRD 下部) |
主要構成部分(上から下へ)
主要ノズル一覧
| ノズル名 | 接続系統 | 位置 | 口径(代表) |
|---|---|---|---|
| 主蒸気ノズル(MSL) | 主蒸気系(4系統) | 上部胴 | 約 650A |
| 給水ノズル | 給水系(2系統) | 中間胴 | 約 300A |
| HPCF/LPCI注水ノズル | 炉心冷却系 | 中間胴〜下部胴 | 約 150〜200A |
| 炉心スプレーノズル | 炉心スプレー系 | シュラウド上部へ接続 | 約 150A |
| RHR注水ノズル(LPFL) | 余熱除去系 | 下部胴 | 約 200A |
| 再循環ノズル(BWR/4〜6) | 再循環系(出口×2・入口×2) | 中間胴 | 約 500A |
| 内部ポンプ差込口(ABWR) | RIP(10台) | 下部胴側面 | — |
| CRDハウジング | 制御棒駆動水圧系 | 下鏡板 | 約 50A×185本(ABWR) |
| LPRMハウジング | 中性子束計装 | 下鏡板 | 約 25A |
| ドレンノズル | ドレン | 下鏡板最下部 | — |
┌─────────────────────────────┐
│ 【上 蓋】 │ ← 定検時取外し・シールはメタルΔリング2重
│ (フランジ締結) │
├─────────────────────────────┤ ← フランジ部
│ ┌───────────────────┐ │
│ │ 【蒸気乾燥器】 │ │ ← 出口蒸気の湿分除去(目標湿分 <0.1 %)
│ │ Steam Dryer │ │
│ ├───────────────────┤ │ ← 主蒸気ノズル(MSL×4)接続
│ │ 【蒸気分離器群】 │ │
│ │ Steam Separators │ │ ← スタンドパイプ+サイクロン分離器
│ └────────┬──────────┘ │
│ │ (シュラウドヘッド) │
│ ┌────────┴──────────┐ │ ← 給水スパージャ・炉心スプレー接続
│ │ 【炉心シュラウド】 │ │
│ ↑ │ ─────────────── │ │
│上昇 │ ║ 燃料集合体群 ║ │ │ ← 炉心領域(740本@ABWR)
│流 │ ║ 【炉 心】 ║ │ │ LPRM・出力領域計装(TIP)貫通
│ ↓ │ ─────────────── │ │
│降下 │ (炉心支持板) │ │
│流 └────────────────────┘ │ ← アニュラス(降水流路)
│ │
│ ╔══ジェットポンプ(BWR)═══╗ │ ← または RIP(ABWR)
│ ║ ドライブノズル→混合部 ║ │
│ ╚════════════════════════╝ │
│ ┌───────────────────┐ │
│ │ 制御棒案内管群 │ │ ← 燃料集合体下部に配置
│ │ (CRDハウジング) │ │ ← 下鏡板貫通・水圧CRD接続
│ └───────────────────┘ │
└─────────────────────────────┘
│ CRD(下部挿入)
蒸気分離器の熱水力(二相流)
2002〜2004年頃、米国の一部BWR(クワッドシティズ・ドレスデン等)で出力増加(EPU:Extended Power Uprate)後に蒸気乾燥器のクラックが発見された。 原因は主蒸気ライン圧力脈動(音響定在波)と乾燥器構造の共振(流力弾性振動)。 出力増加で蒸気流量が増加し、主蒸気ライン安全弁周辺の音響特性が変化して乾燥器に高サイクル疲労が生じた。 対策として構造補強・乾燥器の設計変更・出力上昇前の解析評価(CFD+FEM)が義務付けられた。日本でも同種の評価が行われた。
流量と出力の関係
ジェットポンプの入口混合器を固定する「ビーム(保持金具)」のSUS304溶接部にIGSCCが発生した事例が国内外で報告されている。 ビームが破断・脱落すると入口混合器がガタついてRPV内面を損傷するリスクがある。 定期検査時の目視・UT検査と、必要に応じたクランプ交換・補修が実施される。
| 部位 | 材料 | 規格 | 主な理由 |
|---|---|---|---|
| 胴板・鏡板 | 低合金鋼(Mn-Mo-Ni系) | SA-533 Gr.B Cl.1 / SA-508 Gr.3 Cl.1 | 高強度・低温靭性・大断面鍛造性 |
| 内面クラッド | SUS308L(溶接肉盛) | ASTM A240相当 | 炉水腐食対策・母材への中性子照射影響緩和 |
| ノズル・フランジ | SA-508 Gr.3 Cl.1(鍛造) | ASME Section III | 胴板と同材料で熱膨張整合 |
| シュラウド・内部構造 | SUS316L / SUS304L | ASTM A240 | IGSCC耐性(低炭素・高Mo) |
| CRDハウジング・スタブチューブ | SUS316L | ASTM A182 F316L | 下鏡板貫通溶接部のIGSCC対策 |
| 燃料被覆管・チャンネルボックス | ジルカロイ-2 / Zr-Nb合金 | ASTM B811 | 低中性子吸収・耐腐食性・燃料クラッド化学的両立性 |
溶接管理の重要点
その他の経年変化現象
法規制の枠組み(日本)
主要検査項目
| 検査対象 | 検査方法 | 主な目的 |
|---|---|---|
| RPV胴板・蓋溶接部 | UT(超音波探傷)・VT(目視) | き裂・欠陥の検出・サイジング |
| RPVノズル溶接部 | UT・PT(浸透探傷) | き裂・割れ |
| 炉心シュラウド溶接線 | UT・VT(水中遠隔) | IGSCC検出・き裂進展評価 |
| CRDハウジングスタブチューブ | UT・VT | IGSCC |
| ジェットポンプ部品 | VT(水中遠隔) | ビームクラック・インレットミキサ固定状況 |
| 内部ポンプ(ABWR) | VT・分解点検 | 摺動部摩耗・シール健全性 |
| 燃料集合体 | チャンネルボックス変形測定・燃料棒外観 | 照射成長・ピンホール・損傷 |
| 制御棒 | 制御棒価値測定・外観目視 | 中性子吸収材燃焼・変形・IGSCC |
| 蒸気乾燥器 | VT・PT | き裂・変形 |
| サーベイランスカプセル | シャルピー衝撃試験・化学分析 | 照射脆化の実測 |