BWR 給水・冷却系まとめ

作成日:2026-04-05 / 対象:BWR全般(括弧内はABWR呼称)

格納容器 ドライウェル (D/W) RPV (原子炉圧力容器) 水位 炉心 HPCFスプレイ LPFL注水 主蒸気管 MSIV サプレッションプール (S/P) (CST:復水貯蔵タンクも水源として使用) ベント管 FWP 給水ポンプ 給水系 (FWS) RCIC RCIC(隔離時冷却) HPCF HPCFポンプ CST/S/P HPCF(高圧炉心注水) RHR RHRポンプ HX RHR (LPFL/スプレイ) SRV ADS(安全逃がし弁) タービン G 凡例 給水系 (FWS) RCIC HPCF RHR (LPFL) 蒸気・ベント
図1:BWR主要冷却系統の概念図(ABWR呼称を使用)
※ 系統本数・弁類は模式化。実機は炉型・号機ごとに異なる
時間(事故後) 炉圧 0 低圧 高圧 定格 (~7MPa) 0 数分 数十分 数時間〜 炉圧変化(目安) 給水系 (FWS) 通常運転時 RCIC 高圧域(~低圧まで作動可) HPCF 高圧域から作動 ADS 減圧 RHR (LPFL / サプレッションプール冷却 / 格納容器スプレイ) 低圧域(減圧後または低圧喪失)
図2:炉圧と各冷却系の作動域イメージ(定性的)

1. 給水系(FWS: Feedwater System)

通常運転

通常運転時、復水器で回収した蒸気を凝縮した水を給水加熱器で加熱し、給水ポンプ(FWP)でRPVへ送り込む系統。タービン駆動型と電動型がある。

項目内容
目的通常運転時の炉水位・水量維持
駆動電動ポンプ・タービン駆動ポンプ(主給水ポンプ)
作動条件通常運転時(電源・補機が正常な状態)
注水位置RPV給水ノズル(炉心より上部)
水源復水器ホットウェル → 復水脱塩装置 → 給水加熱器
⚠ 主蒸気隔離弁(MSIV)閉鎖や外部電源喪失時は使用不能になるため、以下の非常用系統が引き継ぐ。

2. RCIC(原子炉隔離時冷却系)

隔離時・高圧域

給水系が使えなくなった場合(MSIV閉鎖、外部電源喪失など)に炉水位を維持するための系統。主蒸気から蒸気を取り出してタービンを回し、そのタービンでポンプを直接駆動するため外部電源が不要

項目内容
目的給水系喪失時の炉水位維持(炉心の過熱防止)
駆動蒸気タービン駆動ポンプ(電源不要)
作動条件高圧〜低圧域(RPV圧力が数 MPa 以上あれば作動可)
注水位置給水ノズル(FWSと同じ配管経由が多い)
水源CST(復水貯蔵タンク)→ 枯渇時はサプレッションプール
流量比較的小流量(水位維持目的、大規模冷却ではない)
💡 福島第一原発1〜3号機でもRCICが一定時間機能した。電源喪失後も蒸気さえあれば動く点が強み。 ただし長期は難しく、最終的には別系統への切替または補給が必要。

3. HPCF(高圧炉心注水系)

高圧ECCS

ECCS(非常用炉心冷却系)の高圧系。炉圧が高い状態でも炉心への直接注水(スプレイ)が可能。旧来BWRではHPCS(高圧炉心スプレイ)とも呼ばれる。ABWRでは2系列装備。

項目内容
目的高圧状態での炉心緊急冷却(大破断LOCAを含む各種事故)
駆動電動ポンプ(交流電源必要)
作動条件高圧域(炉圧が高くても注水可能)
注水位置炉心スプレイノズル(炉心上部から直接散水)
水源CST(優先)→ サプレッションプール(切替)
系列数(ABWR)2系列(互いに独立)
⚠ 電動ポンプのため交流電源が必要。RCICと比べて大流量での炉心冷却が可能。 炉水位が一定以下になると自動起動(LOCA信号 + 炉水位低)。

4. RHR / LPCF(残留熱除去系 / 低圧炉心注水)

低圧ECCS 残留熱除去

RHR(残留熱除去系)は多目的な系統で、複数の運転モードを持つ。低圧状態での大流量注水(LPFL/LPCI)が主なECCS機能。ABWRでは3系列(A/B/C)装備。

RHRの主要運転モード

モード名 正式名称 目的・条件
LPFL
(旧称:LPCI)
Low Pressure Flooder
低圧炉心注水
LOCAや減圧後の低圧状態で炉心へ大流量注水。ECCSの主力。RPV下部から注水(ADS作動後に本格稼働)
SPC Suppression Pool Cooling
サプレッションプール冷却
蒸気放出でプール水温が上昇するのを抑制。格納容器機能維持に重要
CS Containment Spray
格納容器スプレイ
ドライウェル・サプレッションチェンバ内にスプレイして格納容器圧力・温度を低減
FPC連携 Fuel Pool Cooling
燃料プール冷却補助
使用済燃料プール冷却系と連携して冷却
SDC Shutdown Cooling
停止後冷却
通常停止後の崩壊熱除去(炉水を循環させ熱交換器で冷却)
項目内容
駆動電動ポンプ(交流電源必要)
作動条件(LPFL)低圧域(ADS減圧後、または低圧破断LOCA時)
注水位置(LPFL)RPV下部給水ノズル(炉心を下から冷却)
水源サプレッションプール
系列数(ABWR)3系列(A/B/C)各々独立した電源バスに接続
熱交換器各系列に1基(RHR熱交換器):崩壊熱を最終ヒートシンクへ

5. ADS(自動減圧系)との関係

RHR(LPFL)やLPCFは低圧でしか動けないが、LOCAが小さかったり、MSIV閉鎖などで炉圧が下がらない事故では炉圧が高圧に留まる場合がある。このときADS(Automatic Depressurization System:自動減圧系)が安全逃がし弁(SRV)を自動開放して炉圧を下げ、低圧系ECCSが機能できる状態にする。

シナリオ流れ
小破断LOCA 炉圧↓が遅い → RCICで水位維持 → ADS作動 → HPCF/LPFL引き継ぎ
大破断LOCA 炉圧急落 → HPCF高圧注水 → 低圧になったらRHR(LPFL)大流量注水
外部電源喪失 給水系停止 → RCIC起動 → 電源回復まで炉水位維持

まとめ:各系統の比較一覧

系統名 目的 圧力域 駆動方式 注水位置 水源 電源依存
給水系 (FWS) 通常運転給水 全圧(通常) 電動 / TD-FWP 給水ノズル 復水器
RCIC 隔離時水位維持 高〜中圧 蒸気タービン(電源不要) 給水ノズル CST → S/P 不要
HPCF
(旧HPCS)
高圧時炉心冷却 高圧域 電動ポンプ 炉心スプレイ CST → S/P 要(AC)
RHR (LPFL)
(旧LPCI/LPCS)
低圧時炉心冷却 低圧域 電動ポンプ RPV下部給水 S/P 要(AC)
RHR (SPC/CS) 格納容器冷却 低圧域 電動ポンプ S/P循環・D/Wスプレイ S/P 要(AC)
RHR (SDC) 停止後崩壊熱除去 低圧(停止後) 電動ポンプ 炉水循環 炉水 要(AC)
炉型による呼称の違い:
BWR-5(従来型):HPCS / LPCS / LPCI(RHRの一モード)
ABWR(改良型沸騰水型、日本の柏崎刈羽6・7号等):HPCF × 2系列 / RHR(LPFL) × 3系列
※「LPCF」という表記はABWRのLPFL(RHRの低圧炉心注水モード)を指す場合が多い